1923年(大正12年)に誕生以来『Shion(しおん)』の愛称で親しまれている日本で最も長い歴史と伝統を誇る交響吹奏楽団。
2014年大阪市直営より民営化。2015年3月に「大阪市音楽団」より「Osaka Shion Wind Orchestra」と改称。
クラシックからポピュラーまで多彩なコンサートを展開し、各都市での演奏会をはじめ幼稚園から高等学校までの音楽鑑賞会、中学校高等学校での吹奏楽講習会、CD録音など、幅広い活動を通じて音楽文化の向上と発展のために力を注いでいる。
今回は、大阪市音楽団で理事長を務める石井徹哉さんに学生インタビューを行いました。
Profile
石井徹哉 Tetsuya Ishii
千葉県佐倉市出身
武蔵野音楽大学卒業。
トロンボーンを前田保、井上順平の各氏に師事。
現在、Osaka Shion Wind Orchestraバストロンボーン奏者。
関西トロンボーン協会理事。
【インタビューアー】
関西出身。大学4年生。
幼少期から音楽に触れる機会が多く
中学時代に吹奏楽に入部。(バリトンサックス)
高校時代に合唱部に入部。
大学では、また吹奏楽を続けています。
インタビュー内容
Q.理事長のお仕事とは?
A.Osaka Shion Wind Orchestrashion(以下:Shion)を存続させるための経営をすることですね。
理事長の役職は頼まれて引き受けたけれど、やっぱり最初は嫌でした。(笑)
Q.演奏家になろうと思ったきっかけは?
A.音楽が好きだったというだけであまり考えていなかった。中学生の頃から演奏家になろうと思っていました。オーケストラに興味を持って、トロンボーンに興味を持ったから始めたら楽しくて。(笑)
だから実は、Shionに入るまでは吹奏楽をやっていませんでした。
Q.親御さんは音楽関係のお仕事をされているんですか?
A.全然そんなことはないです。小さいころからたまたまピアノをやっていて、その先生がすごくいい人だった。「才能あるよ、ちゃんとやればプロになれる」と言われていたのを信じて続けていた。ピアノは音大に行くまでずっと続けていました。
Q.音楽の世界の上下関係について
A.今はマシになっているけれど、けっこう厳しい関係でした(笑)。先輩は皆、お酒は酒豪でしたね(笑)。後輩にもきちんと指導をしなければならないし、面倒を見ていかなければならない。そういった、職人のような世界観はありましたよ。過去ですけど。けれどそれはコミュニケーションにおける共通認識となるため、そのマナーさえ知っていれば双方で同じことを意識できる。服装などのマナーも教えてもらいました。
Q.先輩からの圧力が大変という話はありましたが、逆に後輩と関わる上で、「こういう人はちょっと……」と思うのはどんな人ですか?
A.言葉遣いがダメな人。敬語使っているつもりでもタメ口が出てしまう人がいる。それは少し気になりますね。これはどこの世界でも一緒と思いますが…。Shionの場合、技術職だから入ってしまえば上も下もないから特殊かもしれません。これからは特に個性の時代なので、過去の伝統の良いところを継承し、個性に目を向けることも大切な時代と感じています。就職しても、企業では同じことを考えている時代ではないでしょうか。
Q.石井さんと河尻さん(ハブアットライフ)が一緒に仕事するのはどんな時ですか?
A.まだ一緒に仕事をしているという感じではありません。共に応援しているという感じでしょうか。学生生活の中で音楽活動に取り組んできた人たちの頑張りを「キャリア」として評価してもらうための認知をしてもらうために何ができるかを、お互いに代表という立場から一緒に考えている感じですね。
Q.仕事の中で、学生のことを考えたりする時間はあるんですか?
A.学生のことを考えるというのはあんまりないですね。
Q.課題曲を演奏するときは、コンクールを意識したりするんですか?
A.特に意識はしていません。他の曲と同じように練習します。コンクールのため、学生のためにやるという意識ではなく、作曲家の意図や、想いをどのように表現するか等、いつもと同じ楽曲に向き合うということを考えています。一つの成果に向かって協力し、コンクールに出場することはとても良いことだとは思います。非言語のコミュニケーション能力もつきますし、支え合い、一つの音楽を作るという感覚は社会に出てからも役に立つと思います。ただ、賞を取るためよりも、音楽にみんなで向き合ってもらうというスタンスが良いのではないかなと個人的には思います。
Q.ここからの目標は?何を見据えて活動していますか?
A.吹奏楽の独自性を伝えて、今後何十年も吹奏楽が続いていく社会にするための活動をするべきかなと思っています。
Q.月イチ吹奏楽を始めたきっかけは?
A.とある学生さんのレッスンをしたときに、「うまくなること」が目標ではなく、一緒に吹くことで「吹けた気になる」という所から、Shionの楽団員が一緒に吹くことで、楽しんでもらえるし、曲が止まることはないと思い、この企画をスタートさせました。曲は絶対に通るので、ブランクがある人にこそ、参加してほしい。(河尻さんも25年のブランクからまた再開されましたものね。笑)
対談後の『石井さん、河尻さんとの対談後の感想』
【吹奏楽】は年齢も幅広く、携わっている人口は非常に多い音楽と思います。一人でメロディーを吹けるようになるまで、たくさん練習して達成感を味わうこともできますが、その努力を皆の力に合奏で変えていくというのは、感動も大きいですよね。またそれを聞いたお客さんにも共感してもらえる。言葉を使わず、非言語のコミュニケーションを行って、感動の総量を増やしていく活動は、一般企業でも同じことが起こっているような気がしました。吹奏楽経験者としても、就活生としても大変有意義な機会となりました。
私が初めて聞いたプロの吹奏楽演奏はshionの課題曲コンサートでした。憧れの演奏家を交えてこのような対談をさせていただけるなんて、当日を迎えるまで信じられませんでした。私が座っていた場所と代わってほしい人なんてたくさんいるだろうな……という恐れ多い気持ちになりましたが、その分たくさんの気になることを聞けたと思っています。この機会を通して、自分が大学生活で吹奏楽に打ち込んできたことは間違っていなかったなと確信できたと同時に、吹奏楽をやっている当人も、自分たちがやっていることの凄さに気付けていないとも思いました。「みんながやっていることって実はすごいことなんだよ」ということを、同じ立場にある学生さんに伝えられたらいいなと思います。そのためにも、今後も就活頑張っていきます!